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理化学研究所で長年腸内細菌について研究している辨野義己先生によると、腸はカラダの中でも最も重要な臓器だそう。
「腸は、動物が進化する過程で最初にできた臓器。脳と連携してカラダの状態を左右し、免疫力にも大きく関わっています。大腸にすむたくさんの腸内細菌は、カラダに様々な影響を及ぼしています」(辨野先生)
科学ジャーナリストの小澤祥司さんは、こう語る。
「最近では、腸内細菌が肥満や老化、はたまた気分や食欲まで左右すると示唆する研究結果も出ています。腸内細菌をうまくコントロールして腸を元気にすれば、美容や健康はもちろん、心の健康まで叶う可能性があるんです」
それでは、腸の“底力”をひとつずつご覧あれ!
“腸年齢”が若ければ、素顔もきれいに!
“腸年齢”とは、辨野先生が提唱する、腸のコンディションの目安。食事や生活環境によって左右される。
「腸内細菌の中には悪玉菌と呼ばれるものがいて、人間にとって有害な物質を作り出しています。この有害物質が腸から吸収されることで、吹き出物ができるなど肌にも影響を与えかねません。そして肉ばかりの食生活や運動不足により腸年齢が高くなると、悪玉菌が大増殖。見た目年齢まで高くなる可能性があります」
すっぴん美人を目指すなら、まずは腸活に励んで腸年齢を下げるべし。
腸の“免疫細胞”が、カラダを守る!
病原菌から身を守る臓器として、腸は免疫力にも大きく関わっている。
「腸には、免疫システムの約60%が集まっています。小腸にはたくさんの免疫細胞がいてカラダをバイ菌から守っています。腸を健康にすると、風邪をひきにくくなったり、アレルギーが改善されたりなどのいい影響が。カラダ全体の免疫力アップにつながります」(辨野先生)
「最新の研究では、免疫細胞の司令塔である“T細胞”の成長に、腸内細菌が関わっているかもしれない、という報告も」(小澤さん)
“溜めない腸”が、ボディラインを美しくする!
「ダイエットのリバウンドや空腹感に、腸内細菌が関わっていることも指摘されています。太りやすさについても、腸の状態が鍵を握っていると言えるのでは」(小澤さん)
便秘による下腹ぽっこりも、腸が不健康になっている証拠。
「よいお通じのためには、3つの力が必要。食物繊維を摂って便を作る力、腸内細菌が食べカスを分解して便を育てる力、腸まわりの筋肉が便を出す力です。これを整えれば溜めないカラダになり、スッキリしたウエストラインに」(辨野先生)
アンチエイジングの新たな鍵は、腸内の“短鎖脂肪酸”。
短鎖脂肪酸とは、腸内細菌が作る酸の一種。それ自体が腸の粘膜を整えるうえに、嬉しい効果があるそう。
「最近では、短鎖脂肪酸が、カラダの中で大変よい働きをすることがわかってきました。例えば短鎖脂肪酸の一種である酪酸は、筋繊維の代謝を活性化させたり、マウスの実験では筋力低下を防ぐことも報告されています。また、短鎖脂肪酸には体内の炎症を防ぐ効果が見られるものが多く、老化を妨げる可能性も。今後、アンチエイジングが期待される分野です」(小澤さん)
“腸内細菌”の働きで、メンタルも整う!?
脳内では神経伝達物質が行き交い、喜びや怒りなどの感情を操っている。
「その神経伝達物質も、実は腸内細菌と関係があるんです。例えば、“意欲”に関わるドーパミンの材料を作る腸内細菌が発見されています。脳によい微生物を腸内で探す“サイコバイオティクス”という研究もトレンド。またストレスに関係する腸内細菌が存在し、このバランスが崩れるとさらなるストレスを呼ぶと指摘する研究も」(辨野先生)
腸内細菌でメンタルケアできる時代が、近い将来やってくるかも。
辨野義己先生 理化学研究所特別招聘研究員。45年にわたって腸内細菌を研究し続ける“うんち博士”。腸や腸内細菌に関する著書を多数執筆する。
小澤祥司さん 科学ジャーナリスト。近著に『メタボも老化も腸内細菌に訊け!』(岩波書店)、『日本一要求の多い消費者たち』(ダイヤモンド社)。
※『anan』2019年7月24日号より。イラスト・サヲリブラウン 取材、文・風間由美子
(by anan編集部)
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