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――ご自身がペン一本で描いたものが実写化される、というのは率直にどういうお気持ちなんでしょうか?
原:「これ大丈夫ですか? 本当にこんなことをしてもらっていいんですか?」とドキッとしたのが率直なところです。「大変なことになったぞ」と(笑)。そう感じたのは、初めて撮影風景を見学させてもらった時ですね。中国のロケ現場で、戦闘シーンの撮影にお邪魔したんですが、王宮の高い壁や、たくさんの弓兵がいることに圧倒されたんです。規模も大きいし、広大なセットにすごい数の人がいたので。僕がペンと紙だけで描いたものが色んな人たちを巻き込んじゃっているんだな、と驚いてしまって。ただ、脚本をしっかり作っていたので、自信はありました。
――本作は、原作者の原さん自らも脚本制作に参加されていますよね。実写化にはノータッチの漫画家の方もいらっしゃいますが、脚本に参加することは当然の選択でしたか?
原:僕はかなりの映画好きで、学生時代は映画監督になりたかったんです。だから、実写化するにあたって、映画は監督のものであるべきだなと思っていたので、「うちの子をお願いします」と作品を託す覚悟を決めました。ただ、同時に映画は脚本が生命線だという思いもあって。それで脚本に関われないかと提案したんです。幸い、プロデューサーの方からもぜひ、と言っていただけました。
僕が一番、「このシーンは要らない」と言っていたかも。
――脚本作りにあたってどんなところを重視しましたか?
原:今回、原作コミック5巻分を2時間の映画にしているんですが、そのまんまの実写化になるといけないということは意識していました。
――確かに、映画オリジナルのシーンも多いですよね。
原:そうなんです。例えば王騎の登場シーンなんかも、原作とは異なっています。2時間の映画として成立させようと考えた時、5巻分のエピソードの中には必要ない部分もたくさんありますから。もしかしたら、原作者の僕が一番「このシーンは要らない」「あのキャラは不必要」と言っていたかもしれません。
――周りのスタッフに止められませんでした?
原:ありましたね。「先生、それはやめましょう」と(笑)。でも、みんながあまり原作に気を使いすぎると作品がうまくいかないなと感じたんです。原作を知らない人が観ても、面白いと思ってもらえる脚本を目指したくて。
――キャスティングにも深く関わられたんですか?
原:もちろん意見は聞かれたんですけど、あくまで制作陣の中で一票を持っているだけです。やっぱり僕は畑が違うので、絶対にこの人がいい、ということは言わないようにしました。でも、みなさん「ここまでハマるとは!」というくらいばっちりな配役です。例えば、主人公・信を演じてくれている山崎賢人君はビジュアルだけじゃなく、人柄も信みたいな子なんです。まっすぐ目を見て喋るところだったり、主役だけど、自分より大人の先輩たちにいじられるところだったり。会うまでは大人気のイケメン俳優さんというイメージだったんですが、いざ信を演じると泥くさいかっこよさもあって、本当に彼が演じてくれてよかったなと思っています。
――印象に残っている山崎さんのシーンはありますか。
原:たくさんありますが、最初に「これはすごい映画になっているぞ」と感じたのは序盤の信と漂の別れのシーンです。CGなどが入っていない段階で映像を見たんですが、ボロボロ涙が出てきて。
――パンフレットに原さんの「5回泣きました」というコメントがありましたが、そこが1回目なんですね。
原:そうです、そこです(笑)。
はら・やすひさ 漫画家。1975年6月9日生まれ、佐賀県基山町出身。2006年より『週刊ヤングジャンプ』で「キングダム」の連載をスタート。2013年には同作で手塚治虫文化賞・マンガ大賞を受賞。
原作/原泰久 監督/佐藤信介 脚本/黒岩勉、佐藤信介、原泰久 出演/山崎賢人、吉沢亮、長澤まさみ、橋本環奈、本郷奏多、大沢たかおほか 4月19日より全国東宝系にてロードショー。主題歌を手掛けたのはONE OK ROCK。©原泰久/集英社 ©2019映画「キングダム」製作委員会
※『anan』2019年4月24日号より。
(by anan編集部)
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