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【話題作の女性監督が現場の性差別を吐露 「私が男なら絶対されなかった」 | ananweb – マガジンハウス】超オススメ!

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話題作の女性監督が現場の性差別を吐露 「私が男なら絶対されなかった」 | ananweb – マガジンハウス

今回はananweb – マガジンハウス – 恋愛現役女子が知りたい情報を毎日更新!さんの最新記事のご紹介です。


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台湾発の話題作『幸福路(こうふくろ)のチー』!

【映画、ときどき私】 vol. 279

アメリカに住むチーは、祖母が亡くなったという知らせを受けて、台湾へと帰国する。しかし、久しぶりに見た故郷の景色は、記憶とはずいぶんと違っていた。同級生に会っても、相手に誰だかわかってもらえず、チーはそれほどまでに自分が変わってしまったのかと困惑することに。

そんななか、チーは幼い頃を過ごした台北の郊外にある町、幸福路を出発点に、自分の人生を振り返りはじめるのだった。そこで見たものとは……。

本作は、台湾アニメーションの歴史を塗り替えたと言っても過言ではないほど、世界各国の映画祭で数々の賞に輝くだけでなく、アカデミー賞長編アニメーションの25作品にもエントリーされた注目作。今回は、完成までの厳しい道のりについて、こちらの方にお話しいただきました。

監督・脚本を手掛けたソン・シンイン監督!

シンイン監督は、京都大学大学院で映画理論を学び、さらにアメリカのコロンビア・カレッジ・シカゴで映画修士号を取得したのちに、いくつかの実写映画を制作してきた実力派。しかし、アニメーションに関しては驚くことに独学であり、半自伝的な本作で初の長編アニメーションへの挑戦となりました。そこで、舞台裏で起きた問題や仕事の原動力について語っていただきました。

―これまで、実写映画で経験を積んできたにもかかわらず、本作ではあえてアニメーションという手法を選ばれました。まずは、その理由を教えてください。

監督 実は、最初は実写で撮ろうと思っていましたが、テレビ局で働く先輩と話をしていて、急に「アニメーションが良いかもしれない」とひらめきました。なぜなら、主人公は妄想が好きな性格ですし、人の成長過程にある暗さや残酷さ、痛さといった部分をアニメーションにすれば、ファンタジーの要素も出すことができ、童話のような味わいが出せると思ったからです。

―結果的に劇中ではアニメーションでしか表現できない部分もあり、見事ではありましたが、とはいえ不安はありませんでしたか?

監督 それはなかったですね。なぜなら、アメリカで実写映画を勉強していた頃から、「何をどういうふうに描きたいか」ということがすごくはっきりしていたからです。ただ、実際に制作過程に入る段階になったとき、自分がいかに知らないことが多いのかということに気がつき、本当にいろいろな困難に見舞われました。

―そのなかでも、大変だったのはどんなことでしょうか?

監督 一番大きな問題となったのは、人とのコミュニケーションでした。というのも、ジブリや新海誠監督の作品のように、システムがきちんと確立されている日本とは違って、台湾ではオリジナルのアニメーションを作る環境がまったく整っていません。

それもあって、私はこの作品のために自分でスタジオを設立したわけですが、私が頼んだアニメーターたちは学校を出たばかりの新人にもかかわらず、みんなアーティスト気取りで、自分のやり方が正しいと思っている人ばかりだったんです。そんな彼らを説得するのは、本当に大変なことでしたね。

ただ、私は自分の意見が通りやすくなるように、自分のお金をかけてスタジオを作ったので、彼らには私の目の前で一生懸命働いてもらうようにお願いしました。とはいえ、私の監視下で自由がないことに不満もあったようですし、「はいはい」と言いながらも全然やってくれないケースも多くありましたが、その理由のひとつは、私が女性であったからです。

女性ならではの難しさに直面した

―つまり、台湾にも男女差別がまだまだ根強くあるという意味ですか?

監督 もちろんありますよ! なので、今回は男性社会のなかで女性としてどうやっていくかという難しさにも直面しました。私はスタジオをまとめるトップでもあるにもかかわらず、あるときラインプロデューサーが私の肩をたたきながら「まあ、がんばってください」と言ったんです。それを見ていた私の夫も、「ああいう態度はよくないね」と言っていたほどでした。

たとえば、本作でチーのいとこであるウェンの声を担当してくれたウェイ・ダーション監督は、台湾でも成功している監督のひとりですが、彼の肩をたたいて「まあ、がんばってね」と声をかけるスタッフは絶対にいませんから。つまり、私は女性だからそうされたのですが、そんなふうに性差別を感じることはありました。

―確かに、私もいろいろな国の女性監督に取材をすることがありますが、女性であることが理由で嫌がらせをされたという話を聞くことはあります。監督はそういう状況を乗り越えるためにしていることはありますか?

監督 たとえば、授賞式などに参加する際、ほかの監督たちと並ぶと、私は唯一の女性となることが多いので、そういうときはきつそうな女性を装うようにしています。それまでは、どちらかというと優しいお姉さんというイメージを持たれていましたが、私は自分を守るために、わざとそうするようになったのです。

そのせいで、「どうして急にこんな厳しい表情に豹変したんですか?」とよく聞かれるようになってしまいましたけどね(笑)。でも、本当に女性監督と男性監督とでは、現場の雰囲気は全然違うものなんですよ。

資金集めで支えてくれたのは夫の存在

―そんな厳しい環境のなかでも、監督は自分でスタジオを設立するだけでなく、なんと1億8千万円もの資金を自らの力で集めたとうかがいました。すばらしい行動力だと思いますが、どのようにして集めたのでしょうか?

監督 まずは、私の短編が台湾のアカデミー賞と言われる「金馬奨(きんばしょう)」で最優秀アニメーション映画賞を獲ることができ、賞金としていただいたのが、日本円で350万円ほど。

そのあとは、国からの補助金ももらうことができましたが、残りは2~3年ほどかけて個人の投資家に出資をお願いするように声をかけました。ただ、「実写の映画だったら出すけど、台湾でアニメが成功した例はないので無理ですね」とみんなに言われてしまったのです。

―そこから、どのようにして説得することができたのですか?

監督 私の著書である『いつもひとりだった、京都での日々』という本をお金持ちの方や弁護士をしている先輩などに送りました。そして、内容に共感して、私のことを信じてくれた16人の方たちがそれぞれ出資してくれることとなりました。そうやって、資金を集めていきましたが、そんなときに私を一番支えてくれたのは、私の夫です。

―妻の夢を全力で応援してくれる旦那さんというのは、とても素敵ですね!

監督 ただし、彼は仕事に対しては厳しい人なので、優しい言葉をかけてくれるというわけではありません(笑)。それでも私があきらめようとすると、すごくポジティブな意見をくれたり、いろいろなアドバイスをくれたりしました。

あとは、出資をしてくれた会計士や弁護士の方々も彼が紹介してくれたのですが、一緒に食事をするときなどに「うちの妻は、いますごくおもしろい映画を作っているので、話を聞いてみませんか?」というふうに、きっかけを作ってくれたのです。

―では、完成した作品を見て、旦那さんも喜ばれたのではないでしょうか?

監督 それよりも、「もうアニメはやめなさい」と言われました(笑)。なぜなら、台湾ではアニメのほうが実写よりも何倍も大変ですから。実際、私はストレスから2年前に倒れたこともありました。そういったこともあって、「次は実写映画を作ってくださいね」とお願いされています。

―それだけ大変さを目の当たりにしたからこそ、旦那さんも心配されているんですね。

監督 そうですね。でも、もし私がまた本当にアニメを作りたいと言ったら、次も絶対に支えてくれると思います。

影響を受けた日本のアニメとは?

―何よりも心強い存在ですね。ちなみに、劇中では『科学忍者隊ガッチャマン』のエピソードも登場しますが、日本のアニメから影響を受けている部分はありますか?

監督 私は日本のアニメには小さいころから親しんでいました。たとえば、『となりのトトロ』とか、『ドラえもん』とか『ちびまる子ちゃん』は本当によく見ていましたが、私だけではなく、多くの台湾人が日本のアニメで育ってきたと思います。あとは、いまだと『名探偵コナン』や『ONE PIECE』、『サザエさん』も人気ですよ。

とはいえ、私のようにそれまで実写で撮っていたのに、「アニメが好きだから、じゃあアニメで撮ろう!」みたいなことをする監督はほかにいないと思いますが……。

―いまではアニメーション制作の大変さも身に染みていると思いますが、そのうえで日本のアニメの魅力はどんなところだと思いますか?

監督 日本のアニメというのは、いまや世界に誇る日本の文化になっていますが、本当にジャンルを問わずに、さまざまな作品ができているところだと感じています。そんなふうに、日本独自の文化を作り上げていることは、すごくうらやましいです。

―監督は京都に2年住まれていたということなので、アニメだけでなく日本の文化にも触れる機会が多かったと思います。そのなかでも、印象に残っていることはありますか?

監督 普段の生活のなかにも、学ぶべき点はたくさんありました。日本人は生活のディテールをものすごく大事にしていると思いますが、たとえば着物でも、外から見るとあまり派手ではないものも、チラリと覗かせる裏地の柄を大事にしていたりしますよね。

そういうところは日本の美学だと思いましたし、小津安二郎監督の映画のなかにも同じようなことを強く感じました。そんなふうに、私は日本人を観察することで多く学んだと思います。

心の目で見て自分の未来を考えてほしい

―そのように言っていただけることは、日本人としてうれしいことです。それでは最後に、ananwebの女性読者へ向けて、メッセージをお願いします!

監督 みなさんにも、「自分が本当は何をしたいのか」「自分の夢は何なのか」というのをちゃんと“心の目”で見てほしいです。そのためには、社会のいろいろな期待に流されることなく、10年後の自分がどういうふうに見えるのかを考えながら、きちんと本当の自分を見ることが必要だと思っています。

心に沁みる珠玉のアニメーション!

いまや、スイーツや旅行先としての人気が高い台湾ですが、その背景についてもより深く理解することができる本作。そして、たとえ経験してきた歴史は違えども、人生で感じる葛藤や成長は誰にとっても同じものだと共感せずにはいられないはずです。あなたも、過去の自分を振り返ることで、新たな一歩を踏み出すことができるかも。

懐かしさがこみ上げる予告編はこちら!

作品情報

『幸福路のチー』
11月29日(金)より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次ロードショー
配給:クレストインターナショナル
提供:竹書房、フロンティアワークス
© Happiness Road Productions Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED.
http://onhappinessroad.net/


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