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夫婦の半生を描いた『エセルとアーネスト ふたりの物語』
【映画、ときどき私】 vol. 262
1928年、ロンドン。メイドとして働いていた生真面目なエセルは、牛乳配達をしている陽気なアーネストと出会い、恋に落ちる。その後、2人は結婚し、ひとり息子のレイモンドにも恵まれ、幸せな生活を送っていた。
ところが、第二次世界大戦の影響で、苦難の日々を強いられることとなる。そんななかでも、エセルの隣には、つねにアーネストが寄り添っていたのだった……。
本作で描かれているのは、ごく平凡な夫婦の40年にもわたる物語ですが、原作となるのは、イギリスでもっとも愛されている絵本作家レイモンド・ブリッグズさんの「エセルとアーネスト」。
日本でも「スノーマン」で知られているレイモンドさんが、激動の時代のなかでも愛情あふれる人生を生き抜いた両親を描いた珠玉の名作です。今回は、本作を完成させた立役者でもあるこちらの方に、お話を聞いてきました。
プロデューサーのカミーラ・ディーキンさん!
映画やテレビ業界で25年以上のキャリアを誇るカミーラさん。これまでにさまざまなアニメーション作品を手掛けてきたカミーラさんですが、9年もの年月をかけて完成させた本作の舞台裏や忘れられないエピソードについて語っていただきました。
―まずは、カミーラさんとこの作品との出会いから教えてください。
カミーラさん この本が出版されたのは1998年で、確か私が読んだのはその翌年だったと思います。当時、私はチャンネル4という公共放送に勤めていて、レイモンドさんのほかの作品に携わっていました。その後、2007年頃にレイモンド作品を数多く映像化してきたアニメーションのプロデューサーから、一緒に仕事をしないかと声をかけてもらったのが始まりです。
―そのとき、この作品の魅力はどんなところだと感じていましたか?
カミーラさん レイモンドさんのほかの作品よりも時代についての物語であり、リアリズムに基づいた作品ですが、私が感銘を受けたのは、非常に誠実で、感情面においても普遍的な物語であるところです。
しかも、私は子どもの頃からレイモンドさんのファンであると同時に、人としても尊敬していたので、この企画は絶対に成功させたいという思いもありました。
―とはいえ、資金集めにかなり苦労されたと聞きましたが、レイモンドさんほどのネームバリューがあるにもかかわらず、何が問題となっていたのでしょうか?
カミーラさん 通常のアニメーション作品と比べると、この作品にはアドベンチャーやファンタジーの要素はなく、どちらかというとドキュメンタリー的な物語だと思われてしまっていたことがまずひとつ。あとは、「大人向けのアニメーションは商業的に当たらないからリスクがある」ということも言われていました。
しかも、手描きのアニメーションというのは、かなり予算がかかってしまうものなので、インディペンデントの作品でも実写よりもはるかに大きな予算が必要になります。そういう意味でも、超えなければならないハードルは非常に高かったです。
―そんななか、どのようにして完成へと導いていったのでしょうか?
カミーラさん まずは、テレビ局のBBC(英国放送協会)と映画に関連する機関であるBFI(英国映画協会)に制作資金を提供してもらい、さらに国が行っている税制優遇処置の制度も活用させてもらいました。イギリスには国としても最大限の資金提供をしてもらいましたが、それでもまだ不十分だったので、最終的にはルクセンブルクのアニメーション会社にも国際共同制作として入ってもらって、ようやく資金をすべて集めることができたという流れです。
ポール・マッカートニーさんとの仕事は素晴らしい経験
―それだけの苦労をしてでも作り上げたいほどの魅力がこの作品にはあると思いますが、同じくこの企画に賛同してくれた存在として話題となっているのが、歌手のポール・マッカートニーさん。本作にエンディング曲を書き下ろしてくれた経緯を教えていただけますか?
カミーラさん まさか曲を書いてもらえるとは思ってもいなかったので、ポールさんとのコラボレーションは本当に素晴らしい経験となりました。もともとポールさんはレイモンドさんの大ファンで、自分のお子さんにも読み聞かせていた『いたずらボギーのファンガスくん』という作品にインスピレーションを受けて、「ボギー・ミュージック」という曲を書いたこともあるほどだったのです。
そこで、レイモンドさんがファンガスくんのキャラクターが描かれている便箋でポールさんに手紙を書いたところ、なんとOKをいただくことができました。
―ポールさんと初めて会われたときの印象的なエピソードはありますか?
カミーラさん 初めてポールさんと会ったのは、ロンドンにある彼のオフィスにレイモンドさんとロジャー・メインウッド監督と私の3人で訪問したとき。私たちはとてもナーバスになってしまい、「ドキドキするよね」「怖いね」なんて話しながら、彼のもとを訪れたのです。
部屋に入ると、あまり広くないスペースにイスが2脚と2人がけのソファ1つ置いてありました。すると、レイモンドも監督もシャイなタイプの人たちなので、すぐにイスを確保してしまい、私がポールさんと同じソファに座らないといけなくなってしまったのです。足が触れ合うくらい近い距離に並んで座ることになったので、そのときは震えてしまわないかが心配でした(笑)。
でも、ポールさんは本当に優しい方ですし、これまでも自分に会って緊張している人たちとたくさん接してきたこともあり、冗談を言って私たちをリラックスさせてくれたのです。
完璧な仕上がりに何も言うことなかった
―ステキな方ですね。ちなみに、どのような冗談をおっしゃっていたのですか?
カミーラさん 「僕はコラボレーションすることが大好きだから、怖がらないでくださいね。だから、作った曲を聴いたら自由にいろいろとコメントしてもらって大丈夫ですよ。ただし、その言葉には耳を貸さずに無視しちゃうけどね(笑)」とおっしゃっていました。
―さすがです(笑)。実際に、曲を聴いたときはどのように感じましたか?
カミーラさん 驚いたことに、ポールさんは私たちが初めて訪問した段階ですでにデモテープを作ってくれていました。そこで聴かせてもらったあと、監督が本当にフィードバックしていましたが、無視されることなく、「検討しますね」というお返事もきちんといただきましたよ(笑)。
ただ、そのあとに歌詞を書いたり、オーケストラを加えてミックスをしたりという作業もあったので、できあがったのは映画の完成直前でしたが、曲を聴いたときは何も言うことがないくらい完璧だと思いました。なので、そのときは一切コメントする必要がありませんでしたね。
しかも、ポールさんのマネージャーさんに聞いたところ、彼のスケジュールは5年先まで埋まっているくらい本当に忙しい方なので、かなり無理をして曲を作ってくれたのだと思うと感謝の気持ちでいっぱいです。
―映画に関しては、ポールさんから何かコメントはありましたか?
カミーラさん 作品を観てくださったあと、「本当に素晴らしい映画だと思う。僕にできることはなんでもサポートしますよ」というご連絡をいただきました。とてもステキなメッセージをいただけて、私たちもうれしかったです。
それから、興味深かったのは、ポールさんとレイモンドさんには多くの共通点があることがわかったこと。ふたりとも労働者階級の出身であったこともあり、育ってきた家の雰囲気やそれほど物が豊かではない家庭であったこと、学費が無料である代わりに難しい入試を受けなければ入れないグラマースクールに通っていたこと、父親が第二次世界大戦の兵士ではあったけれども戦場の前線ではなく、消防士として街で働いていたことなど、本当に多くの点で重なるところがあったのです。
そして、ポールさんが感動していたのは、レイモンドさんが自分の両親へのオマージュを込めてこの作品を作ったこと。それもあって、今回の曲は、レイモンドさんの両親への思いを受けたポールさんが、14歳のときに他界したご自身の母親への気持ちを歌詞に込めたそうです。
亡くなった両親へのオマージュが込められている
―そういったおふたりの思いが作品を通して、多くの人の心を動かしているのだと思います。
カミーラさん そうですね。あと、もうひとつこの作品に込めていることをお話すると、実はポールさんのお父さんは1920年代にジャズバンドでバンドリーダーをされていた人物。レコードは出していないものの、「Walking In The Park With Eloise」という曲を書いていて、これまでにポールさんがカバーしたこともありました。
そこで、劇中でエセルとアーネストが初めて映画館にデートへ行くシーンで、通りかかったクラブから聴こえてくる音楽として使わせていただくことにしたのです。映されている看板にも、ポールさんのお父さんの名前を書いてありますし、最後にポールさんの曲に続けてお父さんの曲も流すようにしました。なので、この映画はレイモンドさんの両親へのオマージュであり、ポールさんの両親へのオマージュでもあるのです。
―そういう家族への思いも含めて、本作は普段アニメを観ない人にでも響く作品となっているように感じました。
カミーラさん 確かに、この作品は家族や人間愛についての映画でもあるので、世界のどこに行っても前向きな反応をいただけていることに私たちも驚きました。というのも、非常に英国的な物語であるにもかかわらず、夫婦愛や親子愛、そして家族の話だとみなさんが捉えてくれたからです。
実際、イギリスではBBCで放送したときに視聴率も非常に高かったですし、放送と同時にTwitterでも「美しい物語で泣いてしまった」とか「両親や祖父母のことを思い出して、久しぶりに電話してみようかな」といった声がたくさんあがりました。そんなふうに、映画が人に行動を起こさせたということ自体、ステキなことですよね。あとは、普段アニメを観ない人たちでさえも「偶然観始めたけれど、引き込まれて驚いた」といった感想を述べていたのも印象的でした。
予想以上の大きな反響があったので、放送された日はイギリス国内のTwitterでは、この作品がトレンドの1位にもなったほど。ちなみに、そのことをレイモンドさんにも電話で伝えましたが、「何のことだかよくわからないけれど、いい話だね」と喜んでくれました(笑)。
忘れがたい体験と驚きを感じて欲しい
―ということは、大人向けのアニメはリスクがあると思われていますが、実際はそういう作品を求めている大人が多いということではないのでしょうか?
カミーラさん そうなんです。つまり、大人たちもアニメーションを求めてはいるんだけど、自分たちに合った作品とまだ出会っていない、もしくはそういう作品があることを知らないというのが現状だと思います。
なので、ananwebを読んでいるみなさんのなかにも、これまではあまりアニメを観てこなかったという人も多いかもしれませんが、この作品に関しては、自分のなかにある気持ちを呼び覚ますような感動を味わえるだけでなく、忘れがたい体験になることをお約束できると思います。ぜひ、その驚きを感じていただけたらうれしいです。
まさに大人が観るべきアニメーション作品!
手描きアニメの持つ温もりとともに、夫婦や親子の間にある愛情の深さを感じられる本作。人生における幸せや喜び、悲しみといった人が持つあらゆる感情に訴えかけるストーリーは、さまざまな経験をした大人だからこそ味わえる感動があるはずです。
心温まる予告編はこちら!
作品情報
『エセルとアーネスト ふたりの物語』
9月28日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー
配給:チャイルド・フィルム/ムヴィオラ
© Ethel & Ernest Productions Limited, Melusine Productions S.A., The British Film Institute and Ffilm Cymru Wales CBC 2016
https://child-film.com/ethelandernest/
原作:「エセルとアーネスト」(バベルプレス刊)
http://www.babelpress.co.jp/ethelandernest
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