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子どもだけでなく、大人の心をもわしづかみにするアニメーション映画を輩出し続ける、ピクサー・アニメーション・スタジオ(以下、ピクサー)。ピクサーがあるのは、全米一多様性のある街として知られるサンフランシスコのベイエリア、エメリーヴィルという街。なんの変哲もない街並みのなか、いきなり巨大なスタジオの入り口がドドーンと現れます。ここは普段、一般には開放されていないものの、ときおり行われるゲスト招待やスタッフの紹介によるゲスト、マスコミ取材などで外部の人も入ることができます。1000人を超すスタッフが勤めており、敷地は野球場一つ分程度。じつは、この社屋が建つ前、この場所は本当に野球場だったそう。社内には、建設中に発掘された野球関連の歴史的アイテムが飾られている場所もあります。
社屋は「ザ・スティーブ・ジョブズ・ビルディング」(以下、社屋A)、「ブルックリン」(以下、社屋B)、「クィーンズ」(以下、社屋C)など。社屋によって役割が違っています。社屋Aはここにピクサーが建てられた当初からあるビルで、デザインを担当したアップル社の元CEOにして、ピクサーの創業者の一人であるスティーブ・ジョブズが亡くなった後、彼の名前を冠しました。ガラス張りのビルに入ると、巨大な吹き抜けと広場のようなスペースにまず驚かされますが、これにも意味があります。ここを全社員が往来するため、あらゆるスタッフが意見交換をできるように配慮されているんですね。それがクリエイターの創造力向上につながる、という仕組み。奧には社員食堂「ルクソーカフェ」(ピザ用の石窯も!)と、街の映画館と同サイズ級の試写室があるほか、ここでしか買えないグッズを売っているスタジオショップもあります。社屋Bは新しい社屋で、主に制作中の作品を担当するスタッフが勤める場所。よって、取材時も入れるエリアは限定されています。こちらにも試写室と社員食堂「V8カフェ」(こちらはサラダバーが自慢)があるほか、吹き替えの収録用スタジオや、VIPを招いた際の隠し部屋などがあります。社屋Cは一見倉庫で、本当に倉庫をリノベした建屋。ここにはこれまでの作品制作で作られた彫刻やスケッチ、アートワークなどの資料がまとめてあり、「ピクサー・アーカイブス」という部署が管理しています。温度・湿度・照明・塵などが一定にキープされ、お宝アーカイブを守り抜いているんですね。ちなみにここを作ったのは最近のことで、発案者は『トイ・ストーリー4』のプロデューサーの一人であるジョナス・リヴェラ。アート部門出身の彼ならではのアイデアで、設立されたそう。
作品を紡ぎ出すスタッフの環境は整っているうえ、しょっぱい話だけど、福利厚生も完璧(と、他スタジオの人の間で有名)。広大な敷地内には、ジム、サッカーコート、プール、バスケットボールコートなどもあり、なんと託児所も併設されているんだとか。スタッフに最高の環境を提供し、最高の作品を作り出そうというのが、アニメーションスタジオの最強ブランド、ピクサーの強み。創業時から活躍しているスタッフが今でも大勢勤め続けているのもうなずけますよね。
社屋Aの玄関にはウッディ&バズの人物大レゴ(右)とインクレディブル・ファミリー(左)が。
社屋Aを入り口から。左が「ルクソーカフェ」、奥の壁の向こうは巨大な試写室。
社屋Bから社屋Aに続く道。右はサッカー場なんですよ。
『トイ・ストーリー4』 20年以上続く長寿シリーズ最新作。おなじみの声優陣が続投する中、新キャラの声も超豪華。監督/ジョシュ・クーリー 声の出演/トム・ハンクス、ティム・アレン、キアヌ・リーヴス 日本版声優/唐沢寿明、所ジョージ、戸田恵子、森川智之ほか 全国公開中。©2019 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
よしひろまさみち オネエ系映画ライター。弊誌ほか女性誌、情報誌で連載するほか、テレビやラジオなどでも映画紹介を担当。じつはピクサー来訪は今回で13回目(日本のプレスでは最多らしい)。
※『anan』2019年8月7日号より。写真・Kaori Suzuki(ピクサー) 取材、文・よしひろまさみち
(by anan編集部)
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