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野性爆弾・くっきー流、壁を壊し続けるヒント。
今、テレビで見ない日はないというくらい大ブレイク中の、野性爆弾・くっきーさん。芸人としてはもちろん、アーティストやバンドマンとして、さまざまなフィールドを縦横無尽に渡り歩いている。
突破のヒント1:今を頑張る。
――今の状況は、想像できていましたか?
くっきー:そもそも売れたいとか、何年後にこうなっていたいとかをリアルに考えたことがなかったんです。よくNSCの先生に「計画を立てろ」と言われてましたけど、それってダサくないですか?(笑) 10億円や家が欲しいとかはありますけど、その日のことしか考えてないんで。もちろん、芸人として瞬間瞬間は必死でやっていましたが、“今日、この仕事が終わったら次の仕事を頑張ろう”って、1日分のタンパク源しかない感じなんです。それに、テレビに出たいという気持ちも、もちろんあったけど、劇場で漫才をやる以外にどうしたらええのか、わからんかったんで。デビューから今まで、先が見えへんからこそ、一日の出番を頑張るというそのスタンスは変わってないし、だから今も、なんとなく仕事が増えてきたなって感じです。もちろん、明確に変わったなと思う瞬間もありますけどね。陣内(智則)さんが紹介してくれて『キャラパレード』に出始めてから、ええ感じになりました。だけど“僕の何がええのん”って、ほんまに不思議。時空が歪んでるってよく言ってますけど、ひん曲がった時代なんじゃないですか(笑)。
――やめようと思ったり、停滞を感じたことはありましたか?
くっきー:何度かあったし、他の道を考えたりもしました。タトゥーの彫り師になりたくて、相方にやめると言ったこともありました。そしたら、「アイボン」したてみたいに目をジャブジャブさせながら「もうちょっとやっていたい」と言ったんで、続けることにして。そのくせ、ネタはぴくりとも作らんし、覚えてもくれない。あの時の涙はなんやったんやろうって思いますけどね(笑)。そもそも、コンビを組んだ記憶もないですし。
――えっ!
くっきー:なんとなくコンビって感じにはなってるけど、正式には組んでないですから。「付き合って」と言うてないのに付き合ってるアベックみたいな。
――NSCの同期には次長課長やチュートリアル、ブラックマヨネーズなど名だたる方々がいます。売れる彼らを見て嫉妬したり、焦ったりはしませんでしたか?
くっきー:まったくないです。ずっと一緒に遊んでいたんで、ツレが売れて嬉しかったです。“よかったよかった”って思うだけで。あんまり何にも思ってないんですよ。
――先輩に相談はしましたか?
くっきー:「どうしたら売れますか」なんてダサくて聞けないですよね(笑)。そもそも売れてへん先輩に相談しても、どうしようもないでしょ。みんなで「売れへんね」とケタケタ笑うだけで。でも、そういう生活が楽しかった。仕事は月に2~3本の舞台だけで借金まみれやったけど、一番楽しかったです。
突破のヒント2:自分を曲げない。
――では、どうやって売れない時期を乗り越えたのでしょうか。
くっきー:自分を曲げないというのは一つありましたね。お客さんに合わせた笑いをしない。というか、合わせ方がわからないから、できへんのです。お笑い自体は好きで見てましたけど、ネタの作り方が一切わからないし、勉強もしてなかった。自分が面白いと思うものを固めて出してるだけやったから、どないもこないもならんですよ、そんな汚い芸は(笑)。でも、当時僕たちが出ていた「心斎橋筋2丁目劇場」には、なだぎ(武)さんやザコシショウさん、ケンドーコバヤシさんがいて、そしてその上にバッファロー吾郎さん、さらに上からリットン調査団が見下ろしている感じやったんですね。みんなスベっても平気で、「へへへ」って笑ってたから、スベることが恥ずかしいとか、恐怖だと感じたことがなかったんです。たとえスベっても、なだぎさんがツッコんで笑ってくれるし。バッファローさんからは、強い鋼の精神をもらいました。おかげで、めっちゃスベって、地球が自転している“ウー…”っていう音が聞こえるくらい静まりかえった瞬間も、面白いと思えるようになりました。そう、芸人には、“チーム曲げない”と“チーム売れたい”がいるんです。
――というのは?
くっきー:自分が面白いと思うことを一番出したいのが“チーム自分を曲げない”で、バッファローさんや僕らはそっち。“売れたい”のほうは、こっちのほうがウケるからこうしようができる、超優秀な人たち。でも、僕は“曲げない”のほうが面白い人が多い気がするし、売れるんちゃうかなって思ってます。そもそもの考え方が変わっている奴だから、そんなに数もいないですし。千鳥や、友近もそう。ブラマヨは“売れたい”という思いを“曲げない”奴やしね。一番ダサいのは、“チーム曲げないぶってる”の人。ぶっとんでるフリをして近づいてくるけど、本物の曲げない人は気づきますから。
突破のヒント3:しがらみから逃げる。
――2008年には東京に拠点を移しています。
くっきー:よく出演してた「うめだ花月」が閉まって大きい劇場ができることになったんです。そこで仕事すると、いろんな師匠に会わざるをえなくて。僕、苦手だったんですよ。ちゃんとウケはる面白い人もたくさんいるけど、なかには、なんでこいつに頭下げないかんのやろ、という人もおったから、挨拶するのが煩わしくて東京に行くことにしました。もちろん、それだけが理由ではないですけどね。でも、東京の「ルミネtheよしもと」に出ると、やっぱりそこにも師匠がいてはるんです。結局、逃れられませんでしたわ(笑)。
――テレビの仕事も多い今、自分のやりたいことが制限されてしまうことはありますか?
くっきー:これまでは、どんな汚いことや歪なことでも、思いついた話をパーンとしゃべっていたんです。テレビでは、それを一回呑み込んで、ちょっと角を取ったやつを出す作業をしているけど、番組や時間帯を見ながら、どこまでいけるかと様子見ながら右往左往する感じが楽しいですね。ようは“チ○コ”なのか“チ○ポコ”なのか“男性器”なのか“陰茎”なのか、その言い方を変えている感じですね。
突破のヒント4:欲を先送りにしない。
――今後の目標はありますか?
くっきー:今までと変わらず、一日を必死でやることを積み重ねていくだけじゃないですか。スケジュールも2週間分しか知らないし。(手で視界を限定しながら)ここだけを見るのを続けていくだけです。
――くっきーさんのように、“ここだけを見る”ことが難しい人も、世の中には多いと思います。
くっきー:たぶん、そういう人はマイナス思考なんでしょうね。僕、超ド級のプラス思考ですから。欲しいものは絶対に手に入ると思っているし、実際、手に入れてきました。たとえば、欲しいギターがあると借金を重ねてもすぐに買う。絶対になんとでもなる、と思っているんです。それは、子どもの頃、親と買い物に行った時に、おもちゃが欲しくて嘘泣きをして手に入れた経験があるから。意地でも手に入れなアカンと思うし、その方法を見つけるようになったんやと思う。だから、今欲しいと思うものを、無理にでも買ってみるといいんじゃないですか? マックスで欲しい時に勝ち取ると、鉈で太い竹を切るくらい気持ちいいから、そうするクセがつくと思いますよ。
やせいばくだん・くっきー 1976年3月12日生まれ。滋賀県出身。『野性爆弾のザ・ワールド チャネリング』(Amazonプライム)などレギュラー番組多数。アートワークをおさめた『くっきずむ』(美術出版社)が発売中。
※『anan』2019年7月31日号より。写真・岡本 俊(まきうらオフィス) インタビュー、文・重信 綾
(by anan編集部)
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