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服部さんが最初に注目したのは、タイトル『Enter the Hypnosis Microphone』。「おそらく有名なアメリカのグループ“Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)”のアルバム名『Enter The Wu-Tang』のオマージュ。これだけでも、リスペクトをもった人たちが、愛をもってこの作品を作ってるんだということが、よくわかります」
また、新曲群の完成度も、今まで以上のクオリティ。
「クリエイターのクレジットを見ると、ヒップホップ界のメジャーな人ばかりでなく、若手をフックアップしているのも好感度が高いです。フックアップ、つまり“引き上げる”というのは、ヒップホップの世界ではよくあること。ベテラン勢で利益を独占しないで、若手にチャンスをシェアしていく…。そんな姿勢からもヒップホップ精神を感じます」
次に着目したのは、収録曲のジャンルの幅広さ。曲調も王道系なヒップホップから、最新トレンドを反映したいわゆる“トラップ”といわれるスタイルまで、その間口の広さは驚異的といえるほど。
「1曲目の『Hoodstar』は今までになく明るい曲調で、楽しい一曲に! これまで全員参加の歌はゴリゴリなラップが多かったから、新鮮です。ヒップホップはもともと、ファンクやソウルをサンプリングする、というところから始まっているので、ある意味伝統的なスタイル。ライブでみんな一緒に歌ったら盛り上がりそうですよね。11曲目の『T.D.DLEGEND』もヒップホップど真ん中なカッコよさ。解散したThe Dirty Dawgの曲で、設定上は過去の作品。『百戦錬磨4MC』と歌っていた彼らが、なぜバラバラになってしまったんだろう…。そう考えると、曲がド派手なだけに、かえって悲しくなります」
4ディビジョンそれぞれの新曲は、日本のヒップホップの広がりが、より感じられるラインナップ。
「イケブクロの新曲『おはようイケブクロ』は、作詞の餓鬼レンジャーのポチョムキンさんの遊び心を感じます。ラジオDJ風な喋りをしながら、ちゃんと韻を踏んでる。しかも韻が固いんです(笑)。これはぜひライブで聴いてみたい。ヨコハマの新曲『シノギ(Dead Pools)』は“ハマにハマれ”の繰り返しが衝撃。実は世界的にも、単純なフレーズを繰り返すのがブーム。銃兎のパートの三連符の踏み方は、流行のトラップ風のフロウの特徴です。このアルバムでも一番今っぽい曲ですね。シブヤの新曲『Stella』は一言で言うと“エモい”、いわゆるストーリーテリングのスタイル。Shing02というラッパーに『星の王子様』という作品があって、起承転結のあるストーリーを語り口調でラップにした…というものなんですが、そのスタイルにかなり近いのでは。シンジュクの新曲『パピヨン』も好きですね! 3人が釣りに行くだけの、ゆったりした“チル曲”。2000年代のメロウなヒップホップを彷彿させます」
また、キャストのラップスキルもぐんぐん向上中。
「何よりも、この楽曲たちを歌いこなす声優さんがすごい! そもそも二次元コンテンツでヒップホップをやるなんて、ものすごくチャレンジングなこと。しかも、ラップの完成度も高い上に、歌も上手。もともとヒップホップの世界では、歌手がフィーチャリングして、曲に歌を入れることがよくあるんです。その点、声優さんはどちらもできる。楽曲もさすがのクオリティですし、ヒップホップ初心者にも薦めたい一枚です」
服部昇大さん 漫画家、イラストレーター。日本語ラップをテーマにしたマンガ『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』の著者。『日ペンの美子ちゃん』6代目の作画を担当。
※『anan』2019年6月19日号より。取材、文・尹 秀姫 ©King Record Co., Ltd. All rights reserved. Illustrator:雪印(HM art Div.)
(by anan編集部)
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