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「原作本との出合いは中学2年のとき。高校生のいとこの文化祭のバザーで、衝動買いしたんです」
タイトルから、偉人たちの伝記を恭しくまとめたものだろうと想像していたサメさんは一読して面食らう。
「“臨終”とあるから、厳粛に人の死を取り扱った、もの寂しげな語り口かと思いきや、誰がどう死んだかの描かれ方があまりにさらりとしていたので、期待をちゃぶ台返しされたような気分でした(笑)。でも、死は重いもの、というのがそもそもステレオタイプな見方だったのかもしれない。いい意味での軽さに、目が啓かされたところがありました」
サメさんの死生観にも大きく影響した作品をマンガにするに当たっては、迷いもあったという。
「原作の魅力は、風太郎節ともいうべき文章の面白さが大きいんですね。マンガ化するのにヘタに言葉を抜粋したら、その世界観が壊れてしまう。再構築するためのコンセプトが何か必要だろうと思いました」
それを考えながら、生年の時系列で人物を並べ直しているうちに、紀元前から昭和まで、時代ごとにくくるスタイルを思いつく。
「原作は没年齢でカテゴライズしているので、若くして活躍した人と晩成型とでは歴史に名を残す位置にひらきが出ます。年代順に並べたことで意外な発見も多かった。たとえば伊藤博文と沖田総司は3歳しか年が違わないんですよね。そうやって歴史的評価を併せ、年代順に組み替えてみると、本編の面白さとは違った“追読”の意味が出てくるなと。そうした副読本的な意識で描いているので、人物や事件の歴史的背景など原作にはない情報も入れています。追読版では原作とは異なる読後感になるだろうと思いましたが、それはそれ。私のマンガをきっかけに、原作に返ってほしいという気持ちがあるので」
山田風太郎の遺稿などを参考に、裏話なども織り込むつもりだったが、
「風太郎先生はボツ原稿や資料のメモ書きをほぼ遺していなかった。そのあっさり加減は、さすが人間臨終図巻の著者の面目躍如ですね(笑)」
『追読人間臨終図巻』I 写真資料なども駆使し、歴史的人物の顔は似せるように意識。文芸誌『読楽』に現在も連載中で、923人の完結までに15年を要するという大プロジェクトだ。徳間書店 1500円 ©サメマチオ/徳間書店
サメマチオ マンガ家。2010年、第1回ネクスト大賞を受賞した『マチキネマ』で鮮烈デビュー。近著に、OLのはつみが、仕事で得た臨時収入で、プチ贅沢体験をする『はつみ道楽』(宙出版)
※『anan』2019年6月19日号より。写真・中島慶子 インタビュー、文・三浦天紗子
(by anan編集部)
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