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主演のカレル・トレンブレイさん!
【映画、ときどき私】 vol. 238
2018年の東京国際映画祭で輝きを放つ若手俳優に送られる「ジェムストーン賞」を受賞し、カナダでも期待の新星と言われているカレルさん。本作では、自分のやりたいことも居場所も未来も見つけられない少女レオニーを見事に演じています。そこで、自身の青春時代についてや悩める人たちへのアドバイスを教えてもらいました。
―まずはこの作品でキャスティングが決まったときの気持ちと、現場での様子を教えてください。
カレルさん これだけ素晴らしい俳優さんたちがいるなかで自分が主役を演じて、しかも出っぱなしというのは、くすぐったいような、うれしいような気持ちでした。
ただ、大きな挑戦でもあったので、すべての責任が自分の肩にのしかかっているようで怖くもあったし、「ひょっとしたら、監督は私にがっかりするかも……」という不安もあったことも事実。
でも、実際にやってみたら現場ではスタッフのみなさんとも信頼関係が生まれていったので、少しずつ自分でそういうプレッシャーを克服していきながら、うまくいったと感じています。
―では、今回の題材をご自身ではどのようにとらえていますか?
カレルさん 青春映画っぽい側面と、都会暮らしではないティーンエージャーの女の子が少し大人になっていくその道のりを描いている作品だと思いました。原題には「ホタルが消えた」というような意味がありますが、そこには「光があるところでホタルを見ることはできないけれど、暗いところでは見える」というメタファーが込められています。
つまり、社会のなかでも光があふれているところでは、少ししか光を出していない人にはなかなか目がいかないということを表しているのです。
―ホタルのエピソードは考えさせられますよね。この作品はハリウッドでよくあるような年上の男性と恋をして成長する物語とは異なりますが、ユニークだと感じた点は?
カレルさん 映画では都会を舞台にしたものが多いですが、この作品では平凡で何もなく、取り立てて美しいわけでもない田舎町が背景にあることはすごく興味深いですよね。そして、未来を見失っている若者を描いているところも大きな特徴だと感じました。
あと、おもしろいのは音楽の使い方。観客のみなさんも「この映画にこんな音楽?」と意外に感じるかもしれませんが、そこはユニークな点のひとつとして挙げられると思います。
育った家庭によっても変わってしまうもの
―いずれも注目のポイントですね。ちなみに、レオニーは人生に目的を持つことや仕事で成功することに反発しているところがありますが、カレルさんから見てどのような人物だと思いましたか?
カレルさん レオニーは、普通よりもすごくシニカルな女の子。だから、いろんなプレッシャーがあっても、「未来なんてそんな大事じゃないわ、そのときに考えればいいのよ!」とあえて自分に言い聞かせて説得しているようなところがあると思いました。
ただ、それはどういう家庭で育ったのかということが大きいんじゃないかなと感じています。レオニーの両親のように、将来に対するプレッシャーをかけてくる家族だからこそ、反抗的な態度になってしまったと思うので、もう少し自由な家庭にいたら違っていたかもしれないですよね。
―そんななか、レオニーは年の離れた男性スティーヴと出会い、微妙な関係へと発展していきますが、この2人についてはどう解釈していますか?
カレルさん 2人の関係は、なかなか言い当てることができないあいまいなものだと思いました。レオニーはすごくエネルギッシュで好奇心があるけれど、スティーヴはそうではなくて、自分にあるもので満足しているような人。つまり、レオニーとスティーヴは正反対の部分を持っているからこそ、お互いに学び合って、補足し合うような関係として続いたのかもしれません。
だから、スティーヴはレオニーの自分にはないものをまぶしいと思っているし、レオニーも穏やかでストレスのないスティーヴに興味を持つことになるんですよね。レオニーは最後にあることをスティーヴにわからせようとしますが、それでも2人の関係は十分に素晴らしいものだと私は思っています。
―ちなみに、カレルさんも年上の男性に惹かれる気持ちはわかりますか?
カレルさん レオニーとスティーヴの関係は、私の現実を反映していないし、そういう願望は私にはないですね。いまの私は彼氏もいないですし、年上の彼氏もいないですよ(笑)。
ティーンエージャーの危機を感じた時期もあった
―インスタなどを拝見するとカレルさんは、レオニーとは違うタイプである印象を受けましたが、共感したところはありましたか?
カレルさん 私は都会育ちですし、「あなたの好きなことをすればいいよ」と言ってくれる自由な家族だったので、何の制約もなかったですね。だから、レオニーのような反抗的でシニカルな性格になることもなかったです。
もちろん、ティーンエージャーの反抗期みたいなものはありましたけど、もうそれは終わっていますよ(笑)。
―とはいえ、幼い頃から女優であるという特殊な環境のなかで、居場所を見失ったり、孤独を感じたりするような経験はありませんでしたか?
カレルさん 私が女優になったのは11歳。だから、みんなと同じように定期的に学校へ行くことはできなかったですし、早くから“大人の世界”に入ってしまったことで、大変なこともありました。そういう意味では、いわゆるティーンエージャーの危機というのも私なりにはあったと思います。
こういう業界のなかで孤独を感じたこともあるし、息苦しい思いをしたこともありましたけど、それを乗り越えて、「自分はこういう人間なんだ」とわかるようになるといろいろと受け入れられるようになるんですよね。10代のときは自分自身を探している段階だったので、つらいときもありましたが、いまはもう自分自身がわかっているので大丈夫です。
―11歳で女優になったのはかなり早いと思いますが、それはご自分の意志ですか? それともご家族の影響でしょうか?
カレルさん 私は自分自身でこの世界に入ろうと思いました。ほかの子どもたちがアニメ映画とかを見ているときに、私は実写映画ばかり見ていて、好きな映画も『フォレスト・ガンプ/一期一会』だったくらい(笑)。
そんなとき、たまたま母の友達の友達がアーティストのエージェントの人だったので、自分からその人に電話をして、いろいろと質問を投げかけて、興味があることを伝えました。
最初は両親も学業がおろそかになることが心配で、すぐに賛成してはくれませんでしたが、できるだけ学校にはまじめに行くと約束して受け入れてもらうことができたのです。
いまは自分のやりたいことに到達できた
―小さいときから自分の人生を積極的に計画し、達成してきているのはすごいことですね。
カレルさん 10代のころというのは「これからの未来をどうするつもりなの?」とか、「どういう職業に就きたいの?」といったことを質問されて、自分自身で方向性を決めていく時期だと思うんですが、私の場合はそれがありませんでした。なぜなら、すでに自分で道を決めていたので。
でも、女優という特別な職業ではなくて、リアリティのある仕事をしてみようと厨房で働いてみたこともありましたよ。
―では、女優として悩んだりした時期はありませんでしたか?
カレルさん カナダのケベックでは、だいたいテレビから入ることが多いので、すぐに映画に出られない傾向にあります。でも、私は自分の満足したところまで行かないうちに次に進んでしまうスピーディーなテレビの撮影方法があまり好きではなかったんです。
だから、そのあとに映画で役をもらえたとき、「これが私のやりたかったことなんだ」とようやくそこに到達できたと思いました。
―日本人にはなかなか好き嫌いをはっきり伝えることができない人が多いので、そういったことで苦悩する若い人たちに向けてアドバイスがあればお願いします。
カレルさん まず、「将来何をしたいのか?」という問いかけ自体が不健全だと私は思っています。なぜなら、仕事だけが人生じゃないですよね? もちろん、仕事を見つけることで自分の生計を立てていけるので大事ではありますが、そういうプレッシャーを若いうちからかけられるというのがいまの社会だと思います。
でも、若いときはすべてにおいて可能性が開かれているし、何だってできるはずです。私の場合は、小さいころから映画をたくさん見ることで感受性が鍛えられていて、いろいろな状況を分析する力があったので、自分の直感を信じていたと思います。もし、そういう直感を信じていなかったら、いまでも何がいいのか悩んでいる若者だったかもしれません。
だから、いまがあるのは、自分のなかで状況を見極めて、直感を信じた結果。若い人たちにはプレッシャーもあると思いますが、みなさんもそれは自分で乗り越えていかないといけないことだと感じています。
ちょっぴり痛いけど、まぶしさが溢れている!
少女から大人へと、誰もが必ず経験する青春時代。キラキラとした思い出だけではなく、ときには退屈で“未来への光”を見失ってしまうこともあるけれど、大人になって振り返ればそれも必要な時間だったと感じるはず。悩めるレオニーが見せる珠玉のラストシーンもお見逃しなく!
ストーリー
カナダのケベックにある街で暮らす17歳のレオニー。高校卒業を1か月後に控えていたが、自分が何をしたいのかわからず、退屈な毎日にイライラしていた。そんなある日、レオニーは街のダイナーで年上のミュージシャンであるスティーヴと出会う。
スティーヴに興味を持ったレオニーは、彼にギターを習うことになり、いつしか不思議な絆が生まれ始めることに。そして、つまらないことだらけだったレオニーの日常が変わろうとしていた……。
青春が詰まった予告編はこちら!
作品情報
『さよなら、退屈なレオニー』
6月15日(土)、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
配給:ブロードメディア・スタジオ
©CORPORATION ACPAV INC. 2018
http://sayonara-leonie.com/
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