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【「知りたくなかった怖い話」勧誘を装い…一人暮らしの女宅を訪れた男の正体 #11 – 文・イラスト 犬養ヒロ | ananweb – マガジンハウス】のご紹介です。

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「知りたくなかった怖い話」勧誘を装い…一人暮らしの女宅を訪れた男の正体 #11 – 文・イラスト 犬養ヒロ | ananweb – マガジンハウス

今回はananweb – マガジンハウス – 恋愛現役女子が知りたい情報を毎日更新!さんの最新記事のご紹介です。


【犬養ヒロの知りたくなかった怖い話】vol. 11

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ノックする男

知りたくない度★☆☆

(かとりせんこう 女 会社員)の体験談

Y美がそのアパートに引っ越したのは、就職が決まったので、会社にほど近い場所に住んだほうが通勤が楽だと思ったからだ。都心に近いのに、築年数が古いせいか周辺アパートより家賃が割安だったところが気に入ったらしい。Y美の部屋は2階の一番端の日当たりの悪い部屋だったが、どうせ昼間は仕事でいないので、そんなことは気にならなかった。

住んでしばらくは、何事も無く普通に暮らしていた。住み始めて1か月目のことだった。夜9時頃だろうか。Y美が部屋で、チューハイを片手にコンビニで買ったサラダを食べながら、テレビを見ていた時だった。

「コンコン」

部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「誰よ、こんな時間に」と思ってドアののぞき窓を見ると、誰も映っていない。

ドアを少し開けて廊下のほうを覗き込むと、顔は見えなかったが、帽子をかぶったトレンチコート姿の男が隣の部屋をノックしているのが見えて、そのままそっとドアを閉めた。

「なんだ、お隣か。こんな時間に訪問するなんて非常識な」きっと新聞の勧誘か何かだろうと思った。

しかし隣が留守だったのか、しばらくするとY美の部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「コンコンコン」

今度は本当に自分の部屋のドアを叩いているが、ドアまで行って勧誘を断るのは面倒くさかったので居留守をしていると、しばらくしたら諦めたのか、音は止んだ。

その次の日の夜の事だった。

「コンコンコン」

またノックの音が聞こえる。どうやらまた隣の部屋をノックしているみたいだ。「チャイムがあるんだから、ノックしないで鳴らせばいいのに……」と、Y美は不愉快に思った。

しばらくすると、やっぱりお隣が留守だったのか、今度はまた自分の部屋のドアがノックされた。

なんてしつこい勧誘だ。どんな奴か見てやろうと、ドアスコープに目を近づけて外を覗いた。おかしな事に、真っ暗で何も映っていない。そしてまた、「コンコンコン」とドアを叩く音がした。

Y美は思った。「わかった! 勧誘の奴、指でドアスコープを押さえてるんだ!」

そう思ったので、腹が立ったY美は「しつこいですよ! うちはお断りなんで!」そう文句を言いながらドアを開けると、あの帽子を被ったトレンチコートを着た男が立っていたのだが、その顔を見て愕然となった。

その男には顔がなかった。

正確には顔の部分が真っ黒のブラックホールのように影になっていて、目や鼻や口というパーツが何もついていなかったのだ。それを見たY美は咄嗟に今まで感じたことのない危険を感じて、反射的に素早くドアを閉めて鍵をかけた。

ドアを閉めることに成功はしたが、たった今自分が目にしたものへの恐怖で心臓は早鐘のように打ち、手が震えていた。今、自分の見たものは何だったのかわからないが、ひとつだけわかったことがあった。

アイツはY美の部屋のドアスコープを指で押さえていたのではなかった。

ドアをノックしながら、ドアスコープを反対側から覗いていたのだ……!

「コンコンコン」

またドアがノックされて、Y美はすくみ上った。とてももう一度、ドアスコープを覗く気にはなれない。きっと覗いたら、また真っ暗な事は簡単に予想が付いた。

「コンコンコン」

「コンコンコン」

「コンコンコン」

しばらくドアはノックされていたが、放っておいたら音は止んだ。きっと諦めたんだろう。

30分ほど経っただろうか、勇気を出して恐る恐るドアスコープを覗いてみると、

今度こそ、外には誰もいなかった。

翌日、ゴミを出しに行く時に隣の部屋の人に会ったので、「夜に新聞か何かの勧誘の人が来てドアをノックされませんか?」とそれとなく聞いてみた。

そうしたら、信じられないことに、「そんな人は今まで来たことがない」と答えたのだ。隣の家の人も夜は部屋の中にいるはずなのに、なぜノックの音が聞こえていないんだろう…?

その後も時々、ドアをノックする音がしているそうだが、Y美はその部屋に2年暮らし続けている。初めは吃驚したが、今では実害も無いので無視しているらしい。

「事情はわからないけど、きっと顔が無いから家に帰れなくて、ずっと自分の家を探して彷徨ってる幽霊だと思うわー」と、今ではすっかり慣れっこで気にもならないのか、他人事のようにY美は言った。

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